開業医と勤務医ってどっちが大変なのかな・・・
開業に興味があるけど、実際に開業した人のリアルな話を聞きたいな・・・
こんなお悩みに対する記事です。
✅ 略歴:初期2年→勤務医10数年→開業
✅ 家族:妻 子供2人(一姫二太郎:7歳と5歳)
✅ 趣味:ランニング 読書 株式投資
✅ フルマラソンベスト:2時間51分10秒)
✅ 座右の銘:良心に恥じぬことだけが確かな報酬
今回の記事の結論です。
✅ 売上:黒字経営キープ
✅ 課題:満足度向上と雇用維持と健康不安
開業医16ヵ月目のリアルな現状と課題
気がつくと開業医になって1年6ヵ月が過ぎていました。
開業前は、
- 開業場所探し(約2年かかった)
- クリニック設計(もうやりたくない)
- 融資の相談(ストレスハンパない)
- 医療機器選定(もうやりたくない)
- スタッフ雇用(今でも悩み中)
- 借地契約の交渉(ストレスハンパない)
- 医療機関への挨拶回り(ストレスハンパない)
- 内覧会の準備(もうやりたくない)
などなど書き出すときりがありませんが、過密スケジュールでした。
私の開業スペックはこちらの通りです。
✅ 開業場所:地元(地方都市)
✅ 開業スタイル:落下傘
✅ スタッフ:院長(私)副院長(妻)看護師3名 事務2名
✅ 診療科目:泌尿器科など計4診療科
✅ 開業時期:2023年冬
開業1ヵ月目、4ヶ月目、9月目、1年目の現状については、こちらの記事をご参照ください。
今回は、勤務医が開業医になって1年6ヵ月が経過したリアルな状況をありのままを記します。
- 勤務医から開業医になろうと検討中
- 開業医のリアルな生活に興味がある
- 開業して色々と不安が多い
このような方々に、何かしらの気づきがあれば幸いです。
患者数
落下傘での開業ということもあり、開業当初は多くても1日10〜20人程度だった患者数。
開業して1年6ヵ月がたち、1日の平均患者数は約70人となり、土曜や祝日明けなどは80名近く来院されます。
来院される患者さんの訴えは、
- 高血圧や糖尿病などの生活習慣病
- 発熱(コロナ、インフルエンザ、溶連菌など何でも)
- ワクチン(肺炎球菌から子宮頚癌まで何でも)
- 慢性咳嗽(意外と多い)
- 排尿の悩み(頻尿、尿失禁など)
- おねしょ
- 男性更年期(最近増えている)
- 性感染症(梅毒など)
- 睡眠のお悩み(不眠など)
- 皮膚のトラブル
- 便秘や下痢など
- 頭痛や肩こりや冷え
など多種多様です。
年齢層も幅広く小さなお子様からご年配の方まで来院され、時間帯によっては小児科クリニックのような状態になっています。
来院される方の内訳は、80%が泌尿器科の患者さんです。
形成外科と美容外科は基本的に完全予約制なので、そこまで混雑はしませんが着実にリピーターも増えています。
患者数の増加要因として、
- 道路看板の設置
- 新聞広告と記事掲載
- フリーペーパーの定期広告
などを開業4ヶ月目頃に増やした影響もあると思いますが、私が一番影響が大きいと考えているのは、インターネットを含むクチコミ効果です。
ホームページやグーグルのクチコミを見て、「評価が良かったから」という理由で来院される患者さんも増えており、インターネット対策は非常に重要と感じます。
また、リアルワールドでのクチコミ効果も非常に高い印象を持っております。
- 友人から「ここのクリニックがいいよ」と聞いて来院した
- 家族が「ここの先生やさしかったから」と紹介され来院した
- 知り合いから「ここなら丁寧に診てくれるよ」と言われ来院した
という声は疲れた時の心の拠り所になっています。
また、グーグルのクチコミも結構見られている様子で、幸い当院は高評価をいただいております。
ちなみに、こちらからクチコミ誘導を行ったことは一度たりともありません。
皆様の良心で良いクチコミを書いて頂いており、感謝の気持ちで溢れております。
一方、
- 〇〇クリニックで、ひどい対応を受けた
- □□医院で、ろくな診察をされず薬だけ出された
- △△病院で、検査結果の説明を全くされなかった
という声も聞くと、逆のことをしっかりする大切さを身にしみて感じます。
そして、患者数増加に伴い出てくる問題が待ち時間。
これを解消すべく予約制度なども導入しましたが、まだ完全に解消できておらず当面の課題ではあります。
売上
患者数の増加に伴い、売上も当然ながら増加しています。
しかし、利益は売上から経費を差し引いたものになりますので、経費(=出費)も多くなっては手残りの利益は増えません。
開業1年経つか経たないあたりから、売上が経費を上回る黒字経営にはなりました。
それまでは、減り続ける預金残高を見ながら戦々恐々としていましたが、最近は資金繰りはなんとかなっている状況です。
私自身も妻も浪費家ではなく、極端に生活の質を変えることもありませんので、このまま順調にいけばなんとか借金は返済できるかと思案しています。
とは言え、まだ開業して1年6ヵ月であり患者数が本当に安定するかどうかはまだ不透明な部分もありますので、現状維持ではなく患者さんによりよい医療と安全を提供すべくサービス向上を目指しています。
話はずれましたが、経費に戻りましょう。
経費の中で特に大きな割合を締める項目は、
- 人件費(スタッフ給与)
- 減価償却費
- 医療材料費
です。
特に人件費が一番ウェイトが高くなります。
医療業界でも賃上げムーブメントが起こっており、ベースアップ加算なるものも出てきており、雇用主としては負担が増す一方ではありますが、やはり給与アップしないと継続して働いてもらえないという厳しい現実もあります。
また給与だけ増やせばよいというものでもなく、
- 働きやすい職場環境
- 安定した福利厚生
- スタッフ自身のスキルアップ
などクリニックがスタッフとって働き続けたいと思える環境を構築することも肝要です。
医師としてだけではなく、クリニック経営者としても院長は立ち振る舞う必要がありますので、医療だけに集中したい方は勤務医の方が合っているかもしれません。
しかし、案外やってみると楽しい側面もありますね。
スタッフが働きやすい職場を作ることは、自分自身にとっても働きやすい職場になりますし、何よりもスタッフが明るく活き活きと働いてくれるとそれだけ仕事もやりやすくなります。
患者さんはもちろん大切ですが、やはり一緒に働いてくれるスタッフを大切にしないとクリニックは上手く回りませんね。
クリニック経営において、売上や利益を安定させることは非常に重要な命題であり欠かすことはできません。
一方で、売上や利益を最優先するばかり、不必要な検査や治療を行うことは言語道断であり、そのような診療を続けていると、患者さんもスタッフも徐々にクリニックから離れていってしまうでしょう。
医療に限らず、人間社会で失ってならないものは信用です。
とある経営者の言葉を引用します。
借金や赤字で会社はつぶれないが、信用を失ったら会社はつぶれる。
信用は一度失うと取り戻すことは非常に困難であり、スタッフにも重々話をしています。
今後も売上を増やし経費を抑えたいところではありますが、私一人が対応できる患者数も限られています。
売上はやはり患者数と単価に比例しますので、
- 手術がある日は医師アルバイトを雇用する
- 自由診療(特に美容外科)の患者数アップ
などの対策も検討中ですが、上を見ればきりがなく下を見てもきりがないように、どこかで見切りをつける必要もありますね。
足を知るべしとは、正にこのことなのでしょう。
課題
前述もしましたが、患者数増加で問題となるのが待ち時間です。
これはどこのクリニックでも苦労されているようで、最適解はないようです。
待ち時間対策として、
- 時間予約システムの導入
- LINEお友達登録で混雑状況の周知
などを行いましたが、少しは解消できるようになりましたが、まだ患者さんからクレームをいただくケースもあります。
- 飛び込みで来られる患者さん
- ふらっと立ち寄りできた患者さん
- ネットを使用できない高齢者の患者さん
- 時間予約で時間通りの診察希望の患者さん
多種多様の患者さん全員に都合がよい予約システムがあればベストです。
しかし、このようなシステムは残念ながら現世に存在しませんし、あれば皆がこのシステムを導入するでしょう。
少しでも待ち時間のストレスを軽減すべく、
- デジタルサイネージの導入
- ホテルアロマでリラックス効果(これは導入済み)
という手法もありますが、誰でも待つのは嫌ですもんね。
続いての課題はスタッフ雇用ですね。
スタッフ雇用や離職対策は、クリニック運営の中でも重要課題の一つに上げられますが、当院ではスタッフ雇用では特に問題はありません。
色々な仲介業者からスタッフ雇用の案件が送られてきますが、幸いにも今採用しているスタッフさんはハローワーク経由で採用した方で、仲介業者への不要な出費は抑えられています。
もしこのブログをご覧になっている看護師さんや医療事務さんがいらっしゃったら断言します。
面倒でも紹介業者を介さずにハローワークを介して応募した方が、確実に採用される可能性は高くなります。
仲介業者を挟んで看護師や事務を雇用すると、莫大な費用が仲介業者に抜き取られるためです。
クリニックのホームページに「現在スタッフ募集はしていない」旨を公開していても、採用希望の電話がかかってくる次第であり、雇用の点については本当に恵まれていると感じています。
そして、最後の課題が自身の健康です。
最近は昼食を取れないのは当たり前で(ランニングしているからという理由もありますが・・・)、水分補給やトイレ休憩も間々なりません。
また、外来業務を終えてからのレセプトやカルテチェック、返書や紹介状作成などのペーパーワークをこなしていると、帰宅時間も21時過ぎになることも少なくありません。
帰宅してから家事等(食器洗い、洗濯物たたむなど)を終えてからの夕食となりますので、健康的とはお世辞にもいえない生活です。
睡眠時間だけはかろうじて確保できていますが、睡眠まで脅かされるようになると流石に私自身の身体も持たなくなるでしょうし、加齢にともなう体力低下も危惧されます。
誰がなんと言おうとも、健康が全ての土台です。
様々な課題があることは、それだけ伸びしろがあるということであり贅沢な悩みと思いながらも、洗濯物をたたみながらつい溜息が出てしまう毎日です。
まとめ
まとめにはいります。
✅ 売上:黒字経営キープ
✅ 課題:満足度向上と雇用維持と健康不安
勤務医から開業医になって1年6ヵ月。
勤務医時代と比較しても仕方ありませんが、ストレスの種類は異なりますが、ストレスの大きさで言えば、開業医になってからの方が大きいですね。
医師という臨床業務のみならず、
- 経営者
- 雇用者
- 管理者
という様々な立ち位置からクリニックを俯瞰する必要に迫られます。
それに加えて、
- 年子の子育て
- 掃除洗濯などの家事
- 臨床医としての研鑽
- 経営者としての研鑽
- 趣味のランニングと株式投資
に使う時間も限りがありますからね。
月夜を眺めながらヘロヘロになって帰路につく日々ではありますが、本当に充実しています。
主体的に自らが選んだ人生を歩んでいるからこそ、このような感情が心の中から沸き起こるものなのでしょう。
そして、どれだけ多忙の中でも感謝の念を忘れずにしたいものです。
- 来院してくださる患者さんとご家族
- 一緒に働いてくれるスタッフ
- サポートしてくださる各業者の方々
本当に頭が上がりません。
そして何よりも、
- 両親
- 家族
ですね。
どれほど感謝をしてもしきれません。
開業医に対する風当たりがますます強くなりそうな社会情勢。
このような逆風が吹き荒れる時だからこそ、「良心に恥じぬことだけが、我々の確かな報酬である」という座右の銘を肝に銘じたいですね。
- 父として
- 夫として
- 医師として
- 経営者として
そして何よりも一人の人間として、これからも日々切磋琢磨していく所存です。
今日も最後までありがとうございました。
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